なんとなく腰痛と付き合っていませんか?
「腰が重いな」「なんとなく痛いな」——そんな感覚を抱えながら、日々をやり過ごしていませんか?
腰痛は、日本人が訴える身体の不調の中でも常に上位に挙がる、とても身近な悩みです。厚生労働省の調査でも、男性では1位、女性では肩こりに次いで2位の自覚症状として報告されています。
しかし、その身近さゆえに「まあ、こんなものだろう」と、原因を深く考えずに過ごしている方も多いのではないでしょうか。痛み止めでその場をしのいだり、湿布を貼って様子を見たり。それで一時的に楽になっても、また同じ痛みが繰り返される——そんな経験はありませんか?
私は東洋医学と西洋医学の両方を学んできた整体師として、長年多くの方のお身体と向き合ってきました。その経験から感じるのは、腰痛と本当の意味で向き合うためには、まず「なぜ痛むのか」を知ることが大切だということです。
この記事では、腰痛の種類や考えられる原因、そして整体としてのアプローチや日常でできるセルフケアについてお伝えします。ご自身の身体を見つめ直すきっかけになれば幸いです。
腰痛の主な種類
ひとくちに「腰痛」と言っても、その種類はさまざまです。ここでは、代表的なものをご紹介します。
椎間板ヘルニア
背骨と背骨の間には、クッションの役割を果たす「椎間板」があります。この椎間板の一部が飛び出し、近くを通る神経を圧迫することで、腰や足に痛み・しびれが生じる状態です。
椎間板が圧迫されて横に広がり、神経に触れてしまうことで痛みにつながります。ただし興味深いことに、画像検査でヘルニアが見つかっても、まったく症状がない方も少なくありません。
脊柱管狭窄症
背骨の中には、神経が通る「脊柱管」というトンネルがあります。加齢などによってこの通り道が狭くなり、神経が圧迫されるのが脊柱管狭窄症です。
特徴的なのは、歩いているうちに足がしびれたり痛くなったりして、少し休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行」という症状です。骨と骨の間の軟骨が薄くなることで、骨同士の間隔が狭まり、神経への圧迫が生じやすくなると考えられています。
坐骨神経痛
坐骨神経痛は、お尻から太ももの裏、ふくらはぎにかけて走る坐骨神経に沿った痛みやしびれを指します。これは病名ではなく「症状の名前」であり、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などが原因となっていることが多いです。
腰痛で悩む方の中でも、この坐骨神経に関連する症状を訴える方はとても多くいらっしゃいます。
圧迫骨折
特に高齢の方に多いのが圧迫骨折です。骨粗しょう症などで骨がもろくなっていると、ちょっとした動作や軽い衝撃でも背骨が潰れてしまうことがあります。
軟骨がすり減った状態が続くと、骨と骨が直接ぶつかりやすくなり、それが圧迫骨折につながることもあります。強い痛みを伴うことが多く、医療機関での診察が必要です。
筋肉や筋膜に由来する腰痛
実は、画像検査で明確な原因が見つからない腰痛は全体の約85%を占めると言われています。こうした腰痛の多くは、筋肉の緊張や筋膜の問題、姿勢の偏りなどが関係していると考えられています。
「骨には異常がない」と言われても痛みがある場合、筋肉や姿勢に目を向けてみることが大切かもしれません。
東洋医学からみた腰痛の主な原因
東洋医学では、身体を部分ではなく全体として捉えます。腰の痛みも、腰だけの問題ではなく、身体全体のバランスや内臓の状態、気血の流れといった観点から考えます。
「冷え」と血流の滞り
東洋医学では「冷え」をとても重視します。施術の現場で多くの方のお身体に触れてきた経験から、腰痛を抱える方にはお尻が冷たい方が多いように感じています。
東洋医学的な見方では、腸が冷えるとその影響がお尻や腰まわりにも伝わりやすいと考えられています。冷えによって血のめぐりが滞ると、筋肉がこわばりやすくなり、さまざまな不調につながる可能性があります。
また、軟骨や関節まわりの組織に必要な栄養は、血流によって運ばれます。血流が滞れば、いくら良い栄養を摂っていても、必要な場所に届きにくくなってしまいます。コンドロイチンやヒアルロン酸といった成分が話題になることがありますが、まずは血のめぐりを整えることが土台になるのではないか——これが東洋医学的な発想です。
内臓の状態と身体のつながり
東洋医学では、内臓の状態が身体の外側にも現れると考えます。たとえば、特定の臓器に負担がかかっているとき、その臓器がある側の背中の筋肉が張りやすいという見方があります。
肝臓は身体の右側にあります。肝臓に疲れが溜まっていると、右側の背中の筋肉が緊張しやすくなり、それが骨盤のバランスにも影響を与える可能性がある——これは東洋医学的な一つの見立てです。
足を組むクセにも、こうした内臓の状態が関係していることがあると言われています。楽に感じる姿勢が実は身体からのサインかもしれない、という視点は興味深いものです。
整体におけるアプローチ
では、整体では腰痛に対してどのようにアプローチするのでしょうか。ここでは、私が施術の中で大切にしている考え方をお伝えします。
骨盤のバランスを整える
腰痛でいらっしゃる方のお身体を見ていると、骨盤の左右どちらかが上がっているように感じることがよくあります。骨盤は背骨の土台です。この土台が傾いていると、その上に乗る背骨も真っ直ぐに保ちにくくなります。
骨盤が傾く原因の一つとして、背中や腰まわりの筋肉の緊張が挙げられます。筋肉が張って硬くなっていると、その筋肉に引っ張られるように骨盤の位置も変化しやすくなるのです。
筋肉の緊張をゆるめる
私の施術では、まず緊張している筋肉をゆるめることを意識しています。筋肉がゆるんだ状態になると、骨格も本来あるべき位置に戻りやすくなります。
筋肉に余裕がある状態と、パンパンに張っている状態を想像してみてください。張った状態では、骨が引っ張られて位置がずれやすくなります。逆に、筋肉がゆるんでいれば、骨も自然な位置を保ちやすいのです。
骨の位置を整える
筋肉がゆるんだ状態で、骨の位置を本来あるべきところに導いていきます。整体では「骨を入れる」という言い方をすることがありますが、これは骨格を正しい位置に整えることを指しています。
身体を斜めにねじるような動きをすることで、筋肉がさらにゆるみ、骨の位置を調整しやすくなります。こうして筋肉と骨格の両方からバランスを整えていくことで、身体が楽な状態に近づいていくことを目指しています。
日常生活で気をつけたいこと
整体で身体を整えても、日常の習慣が変わらなければ、また同じ状態に戻りやすくなってしまいます。ここでは、腰の健康を保つために意識していただきたいことをお伝えします。
長時間座り続けない
デスクワークやリモートワークで、長時間椅子に座り続けている方は多いのではないでしょうか。実は、これが腰への大きな負担になっています。
長く座っていると、骨盤まわりの筋肉が緊張したまま固まったり、逆に使われなくなって弱くなったりします。また、座った姿勢では血流も滞りやすく、腰まわりの冷えにもつながります。
さらに、長時間座ることで骨盤が外に開きやすくなり、それがO脚傾向や姿勢の崩れを招くこともあります。背筋を伸ばして「良い姿勢」を保とうとしても、筋肉を緊張させた状態が続けば、それ自体が腰痛の原因になりかねません。
理想的なのは、30分〜1時間に一度は立ち上がること。軽く歩いたり、屈伸をしたりするだけでも、血流が改善し、筋肉の緊張もほぐれやすくなります。
姿勢のクセを見直す
足を組む、いつも同じ側でバッグを持つ、片足に体重をかけて立つ——こうした何気ない習慣が、身体の左右バランスを崩す原因になることがあります。
片側に負荷がかかり続けると、肩から骨盤へとその影響が伝わり、身体全体のバランスが崩れやすくなります。完全になくすことは難しくても、意識して反対側も使うようにするだけで違いが出てきます。
腰に負担をかけない体幹トレーニング
体幹の筋肉を鍛えることは、腰の健康を保つ上でとても大切です。自分の体重を骨だけで支えるよりも、筋肉と一緒に支えることで腰への負担を軽減できます。若い方でも筋肉量が少ないと、腰に不調が出やすい傾向があります。
ただし、腰痛がある方や体重が気になる方は、激しい腹筋運動は避けた方が良いでしょう。腰に負担をかけない穏やかな方法をおすすめします。
◆ ドローイン:お腹を一瞬へこませて、ゆるめる動作を繰り返す
◆ ペットボトルを使った呼吸法:仰向けでお腹にペットボトルなどを乗せ、呼吸でゆっくり上下させる
◆ バードドッグ:四つ這いで対角の手足をゆっくり伸ばす
無理のない範囲で、毎日少しずつ続けることが大切です。
血流を意識する
腰まわりの血流を良くすることも、セルフケアとして有効です。お尻から背中にかけて当てられる振動クッションを使うのも一つの方法です。高価なものでなくても構いません。時々ONにしたりOFFにしたりすることで、血行を促すきっかけになります。
入浴でしっかり身体を温めることや、軽いストレッチで筋肉をほぐすことも、血流改善につながります。
おわりに
腰痛には、骨格、筋肉、血流、生活習慣、そして内臓の状態まで、さまざまな要素が複雑に絡み合っています。だからこそ、痛みのある部分だけを見るのではなく、身体全体のバランスに目を向けることが大切だと考えています。
「なんとなく付き合ってきた腰痛」を、この機会に見つめ直してみませんか? ご自身の身体の声に耳を傾け、できることから少しずつ取り入れていただければ幸いです。
当院では、お一人おひとりの身体の状態を丁寧に見ながら、筋肉の緊張をゆるめ、骨格のバランスを整えるお手伝いをしています。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
なお、強い痛みが続く場合、足のしびれや筋力の低下がある場合、排尿・排便に異常を感じる場合などは、必ず医療機関を受診してください。
※本記事は整体師としての経験と東洋医学・西洋医学の知見に基づく情報提供を目的としています。医学的な診断・治療を行うものではありません。東洋医学に基づく考え方や整体師としての経験則は、現代医学において科学的に検証されたものではなく、一つの見方としてご参照ください。症状が続く場合や気になる症状がある場合は、医療機関への受診をおすすめします。
