こんにちは、最近眠れていますか?
日々、私は整体師としての施術を通じてたくさんの方とお話しする中で、「なかなか眠れない」「眠りが浅い」「朝起きても疲れが取れない」というお悩みを本当によく耳にします。
今日は、私なりの視点から「睡眠の質」と「身体の状態」の関係について、西洋医学的な知見も交えながらお話ししたいと思います。
現代人が「眠りにくい」理由を考える
私たちの祖先は、太陽が昇ったら活動し、日が沈んだら休むという、自然のリズムに沿った生活を送っていました。
しかし現代では、夜も明るい照明の下で過ごし、スマートフォンやパソコンから常に情報を取り込み続ける生活が当たり前になっています。「四六時中、何かを学ばなければ」「常に情報をキャッチアップしなければ」という価値観が広がり、脳を休める時間が減っているように感じます。
本来、人間には「何も考えない時間」や「ぼーっとする時間」が必要だったはずです。一見「無駄」に思えるこうした時間が、実は心身のバランスを整えるために大切な役割を果たしていたのではないでしょうか。
自律神経のしくみ ― 西洋医学の視点から
ここで、睡眠と深く関わる「自律神経」について、少し詳しくお話しさせてください。
私たちの身体には、自分の意思ではコントロールできない「自律神経」という神経があります。心臓の鼓動、呼吸、血圧の調整、体温調節など、生命維持に欠かせない機能を24時間休まず自動的に調整してくれているのが、この自律神経です。
自律神経は「交感神経」と「副交感神経」の2つで構成されています。よく「アクセル」と「ブレーキ」に例えられますが、この2つがシーソーのようにバランスを取りながら働くことで、私たちの身体は適切な状態に保たれています。
交感神経 ― 「戦うか逃げるか」の神経
交感神経は、身体を活動モードにする神経です。医学的には「闘争・逃走反応」を司る神経として知られています。
交感神経が優位になると、心拍数が上がり、血圧が上昇し、瞳孔が開き、血糖値が上がります。これは、かつて私たちの祖先が野生動物に襲われそうになったとき、瞬時に戦ったり逃げたりできるように身体を準備する反応でした。
そしてここが重要なポイントですが、交感神経が優位になると血管が収縮します。これは、戦いで傷ついたときに出血を抑えるための身体の防御反応です。血管が収縮すると、血液は末端まで届きにくくなり、手足が冷たくなります。
副交感神経 ― 「休息と回復」の神経
一方、副交感神経は、身体をリラックスモードにする神経です。心拍数を下げ、血圧を低下させ、消化活動を活発にします。
副交感神経が優位になると、血管が拡張して血流が良くなります。血液が身体のすみずみまで行き渡ることで、酸素や栄養が細胞に届き、老廃物の回収も促進されます。内臓や筋肉で生まれた熱が全身に運ばれるため、身体が温まります。
そして、この副交感神経が十分に働いている状態でなければ、私たちは深く眠ることができません。
なぜ「血流が悪い」と眠れないのか
ここまでの説明でお分かりいただけたと思いますが、交感神経と副交感神経は血管の収縮・拡張をコントロールしています。つまり、自律神経のバランスと血流は、切っても切れない関係にあるのです。
現代人の多くは、慢性的に交感神経が優位な状態が続いています。仕事のストレス、人間関係の緊張、デジタル機器からの刺激、睡眠不足…これらはすべて交感神経を刺激します。
交感神経が優位な状態が続くと、血管は収縮したままになり、血流が滞ります。すると、身体は「まだ戦闘態勢を解いてはいけない」と判断し、なかなか副交感神経に切り替わりません。
これは私の経験上の見解ですが、身体は「めぐりが悪い状態」を一種の危険信号として捉え、深く眠ることを避けようとする働きがあるように思います。逆に言えば、血流が改善されることで身体が「安全だ」と認識し、自然と副交感神経が働きやすくなるのではないかと考えています。
深い眠りと成長ホルモンの関係
睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があり、約90〜120分の周期で繰り返されています。
特に重要なのが、眠り始めてから最初の3時間ほどに現れる「深いノンレム睡眠」です。この時間帯に、脳の下垂体から「成長ホルモン」が大量に分泌されます。
成長ホルモンというと「子どもの成長に必要なもの」というイメージがあるかもしれませんが、実は大人にとっても非常に重要なホルモンです。
成長ホルモンの主な働き:
- 傷ついた細胞の修復・再生
- 筋肉の維持・形成
- 肌のターンオーバー促進
- 免疫細胞の再生
- 脂肪の分解・代謝の促進
- 骨密度の維持
つまり、成長ホルモンは「身体のメンテナンス」全般を担っているのです。
ここで重要なのは、成長ホルモンの分泌は「何時に寝るか」ではなく「どれだけ深く眠れるか」に依存しているという点です。研究によると、眠りが浅いと成長ホルモンの分泌は減少し、睡眠が分断されるとさらに抑制されることが分かっています。
逆に言えば、血流を良くして副交感神経を優位にし、深い睡眠に入りやすい状態を作ることが、身体の回復力を高めることにつながると考えられます。
整体師として考える「めぐり」と「眠り」
整体の施術では、筋肉の緊張をほぐし、身体のバランスを整えることを目指します。
施術を受けた方から「その日はぐっすり眠れた」「身体が軽くなって、自然と眠くなった」というお声をいただくことがあります。
これは私の考えですが、筋肉の緊張がほぐれると、筋肉によって圧迫されていた血管が解放され、血流が改善されます。すると身体が「安全だ」と認識し、副交感神経が働きやすくなる。結果として、深い眠りに入りやすい状態が整うのではないかと感じています。
首には「迷走神経」という副交感神経の重要な束が通っており、また「星状神経節」という交感神経の集まりもあります。首周りの血行が改善されると、これらの神経の働きも整いやすくなると言われています。
もちろん、睡眠の質には食事、運動、ストレス、生活環境など様々な要因が関わっています。整体はその中の一つの選択肢として、身体の状態を整えるお手伝いができればと思っています。
健康の基本は「快食・快眠・快便」
昔から「快食・快眠・快便」が健康のバロメーターと言われてきました。
美味しく食べられること、ぐっすり眠れること、すっきり出せること。そしてこれに「適度な運動」を加えた4つが揃うと、身体は自然と良い状態を保ちやすくなります。
興味深いことに、これらはすべて自律神経と深く関わっています。胃腸の働きは副交感神経が活発なときに促進されますし、排便も副交感神経の働きによってスムーズになります。適度な運動は、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにする効果があります。
年齢を重ねると、なかなか運動の機会が減ってしまう方も多いと思います。そんな方にとって、定期的に身体をほぐす整体の時間が、一つのきっかけになれば嬉しいです。
今日からできる「深い眠り」のための習慣
最後に、副交感神経を優位にして深い眠りを得るために、今日から実践できることをいくつかご紹介します。
身体を温める
入浴やホットタオルで身体を温めると、血管が拡張して血流が良くなり、副交感神経が優位になりやすくなります。特に首を温めることは、自律神経のバランスを整えるのに効果的と言われています。寝る1時間前の入浴がおすすめです。
呼吸を意識する
深くゆっくりとした腹式呼吸は、副交感神経を刺激します。吸う時間の2倍かけてゆっくり吐くことを意識してみてください。
寝る前の1時間はスマホなどの画面を見ない
スマートフォンやパソコンの光は交感神経を刺激します。寝る前は照明を落とし、リラックスできる時間を作りましょう。
毎日同じ時間に起きる
体内時計を整えるために、休日も含めてできるだけ同じ時間に起床することが大切です。朝、太陽の光を浴びることで、夜のメラトニン分泌がスムーズになります。
おわりに
今回は、睡眠の質と身体のめぐりについて、西洋医学的な視点も交えながらお話ししました。
交感神経と副交感神経のバランス、血流と睡眠の関係、成長ホルモンの役割…これらを知ることで、「なぜ眠れないのか」「なぜ疲れが取れないのか」のヒントが見えてくるのではないでしょうか。
「最近、眠りが浅い」「朝起きるのがつらい」と感じている方は、まずは日々の生活リズムを見直してみることをおすすめします。そして、身体の緊張やコリが気になる方は、整体で身体を整えるという選択肢も検討してみてください。
皆さんが今日もぐっすり眠れますように。
※本記事は整体師としての経験と考えに基づく個人的な見解です。特定の疾病の診断・治療を目的としたものではありません。身体の不調が続く場合は、医療機関への受診をおすすめします。
